スウェーデンのシンボルといわれている手工芸品のダーラナホース/ダーラヘスト(スウェーデンの木の馬)は、18世紀の始め頃、木こりの人たちが仕事が終わった後に遊び半分に作った木彫りの馬が始まりといわれています。
スウェーデンの冬は日照時間が短いので、木こり達は仕事を早く終えストーブの前に座り、雑談をしながら、材木の切れ端で木彫りの馬をよく作りました。
当時は子供のおもちゃにいろいろな動物を作りましたが、特に馬が多く彫られました。
馬は冬の間、重い材木を森から運び出す大切な役割をもっており、森や畑でも人々に従順な動物としてとても重宝にされ愛されていたため、彼らにとってかけがえのない存在でした。
その後この木彫りの馬は、子供達のおもちゃとして自然に定着していき、赤く色が塗られるようになったのは19世紀になってから。銅で塗られた赤いものが始まりで今ではいろいろなカラーで色づけされています。ダーラナホース/ダーラヘスト(スウェーデンの木の馬)の一般的な模様は18世紀のクルビッツ塗りが原型となっており、現在の花柄のような模様は熟練のペインターさんにより2色の一筆描きで見事に描かれています。
子供のおもちゃとしてかかせないものとなったダーラナホース/ダーラヘスト(スウェーデンの木の馬)は人気が定着するにつれ、冬だけでなく、年間を通じて作られるようになっていきました。ダーラナホース/ダーラヘスト(スウェーデンの木の馬)はいつの間にかムーラ周辺の村の名物となり、20世紀にはダーラナ地方の新しい産業へと発展していきました。
始めの頃は斧で原木を切り出していたため、1つ1つの馬はサイズや形のばらつきがありましたが、1920年頃に帯ノコで板状の木材を同じ大きさの馬の形に切り取っていくことができるようになり、寸法と形が一定した馬を職人さんが手彫りでダーラナホース(スウェーデンの木の馬)に仕上げていくようになりました。
現在はダーラナ地方に工房があり、職人さん達により一つ一つ手作りされています。
最も有名な工房はオルソン兄弟の工房で、1928年に15歳のニルス少年と13歳のジャニス兄弟が木彫りを始めたのがスタートでした。
兄弟の工房は現在もシリアン湖周辺にあり、伝統を守り続けています。
1939年にニューヨークで行われた"国際見本市"でダーラナホース/ダーラヘスト(スウェーデンの木の馬)は紹介され脚光を浴び、その後世界的に知られるスウェーデンの民芸品になりました。
スウェーデンパインを伐採し、木馬形に削られたものを2〜3週間乾燥させ、水性塗料を塗った後、サンドペーパーで磨き上げ、再度塗料を塗り、油性絵の具で模様が描かれ、最後にニスで全体をコーティングします。なんと完成までに1ヶ月以上の時間がかかっています。
模様付けも手作業で職人さんが描きます。あっという間に複雑な模様が見事に描かれます。
基本的な色あわせや模様は統一されていますが、まったく同じものは二つとないところが手作りの魅力です。
ダーラナホース/ダーラヘスト(スウェーデンの木の馬)にはスウェーデンの厳しい冬の寒さに耐えながら育った樹木の強さと、美しい自然、人々の温かさが感じられます。
”幸せを運んでくれる馬”と言われ愛され続けています。